1600年頃、「赤い染料を生み出す盾虫(Coccus ilicis)」を指す言葉として使われ始めました(1590年代には、これらの昆虫が生息する木を指していました)。この言葉は中世ラテン語の cremesinus に由来し、フランス語の kermès、イタリア語の chermes、スペイン語の carmes も同じ語源です。さらに遡ると、アラビア語の qirmiz(「kermes」)や、サンスクリット語の krmi-ja(「虫が生み出す赤い染料」)が起源となっています。
このサンスクリット語の複合語は、krmih(「虫」、印欧語族の語根 *kwrmi-「虫」に由来で、リトアニア語の kirmis、古代アイルランド語の cruim、アルバニア語の krimp「虫」も同根)と、-ja-(「生み出す」、印欧語族の語根 *gene-「生む、繁殖する」に由来)から成り立っています。この昆虫はレバント地方や南ヨーロッパの小さな常緑オーク(ケルメスオーク)に生息し、古代ヨーロッパでは赤や緋色の染料の主要な供給源でした。染料は妊娠した雌の乾燥した体から作られます。生きている状態では、小さな丸い粒(エンドウ豆ほどの大きさ)に見え、彼らが生息する木に動かずしがみついています。このため、ケルメス染料は長い間、木の種や異常成長物から作られると誤解されていました。ギリシャ語では kokkos(「粒、種」)と呼ばれ(cocco-を参照)、ラテン語では coccum、coccus(「緋色の染料を生み出すベリー」)と変化し、後には「緋色の色、緋色の衣服」を指すようになりました。
ケルメス(coccus)は商業的な緋色染料の重要な供給源であったため、その名前の派生形が多くの言語で「赤」を表す元の言葉を置き換えました。例えば、ウェールズ語の coch(ラテン語から)、現代ギリシャ語の kokkinosなどです。また、ロシア語の čcermnyj(「紫赤」)、古代教会スラヴ語の čruminuとも比較できます。crimson(名詞)とも関連があります。
ケルメス染料は、アングロ・スカンジナビアのヨークで発見された埋葬用の布に見られますが、ヨーロッパでは暗黒時代から15世紀初頭までその使用が失われていたようです。その後、新世界からの cochineal(この言葉自体も coccus に由来かもしれません)の導入により、再び使われなくなりました。
Cloths dyed with kermes are of a deep red colour; and though much inferior in brilliancy to the scarlet cloths dyed with real Mexican cochineal, they retain the colour better and are less liable to stain. The tapestries of Brussels and other parts of Flanders, which have scarcely lost any thing of their original brilliancy, even after a lapse of 200 years, were all dyed with kermes. [W.T. Brande, "Dictionary of Science, Literature, & Art," London, 1842]
ケルメスで染められた布は深紅の色合いを持ち、メキシコの本物のコチニールで染められた緋色の布に比べて輝きは劣りますが、色持ちが良く、染みになりにくいです。ブリュッセルやフランドルの他の地域のタペストリーは、200年経ってもほとんど元の輝きを失っておらず、すべてケルメスで染められています。[W.T. Brande, "Dictionary of Science, Literature, & Art," London, 1842]