古英語の cros は「キリストの十字架の道具;キリスト教の象徴」を意味し、10世紀中頃に使われていました。この言葉はおそらく古ノルド語や他のスカンジナビア語から派生したもので、古アイルランド語の cros が起源とされ、さらにラテン語の crux(対格 crucem、属格 crucis)から来ています。このラテン語は「犯罪者が串刺しにされたり、吊るされたりするための棒や十字架」を指し、元々は「高くて丸い柱」を意味していました。そこから比喩的に「拷問、苦痛、悲惨さ」を表すようになり、詳しくは crux を参照してください。また、ラテン語の crux からは、イタリア語の croce、フランス語の croix、スペイン語とポルトガル語の cruz、オランダ語の kruis、ドイツ語の Kreuz などが派生しました。
現代英語の形は北イングランドの方言から来ており、これが主流となりました。中英語では、同じ単語が大陸から異なる経路で伝わり、他にも二つの形がありました。cruche や crouche(約1200年頃)は中世ラテン語から来ており、イタリア語の croce の発音に似ています(Crouchmas「十字架の発見を祝う祭り」、14世紀後期を参照)。その後、特に南イングランドでは、古フランス語からの crois や croice が一般的になりました(croisade は crusade の古い形です)。古英語では rood という言葉が使われていました。
約1200年頃からは「十字架の装飾的な模様;十字架に似たものや十字架の形をしたもの;右手や指で描く十字の印」を意味しました。14世紀中頃からは「人間の像が付いた小さな十字架;十字架像」を指し、14世紀後期には「屋外にある十字架の形をした構造物や記念碑」を意味するようになりました。同じく14世紀後期からは「表面に描かれたまたは切り取られた二本の線が交差することでできる十字;直角で交差する二本の線;宗教的な意味を問わず十字の形」を表しました。また、12世紀後期からは姓としても使われるようになりました。
約1200年頃からは比喩的に「キリスト教徒の苦しみ;キリストのために自ら負う苦難;試練や苦痛;キリストの名の下での悔い改め」を意味するようになり、これはマタイによる福音書の10章38節や16章24節などから来ています。キリストの使命における「十字架による死と苦しみ」という神学的な意味は14世紀後期から見られます。
1760年からは「動物の品種改良における交配」を指し、1796年からは「二つの異なるものの特性が混ざり合ったもの;混合」を意味するようになりました。ボクシングでは1906年から使われ始め、相手のリードを越えるように打つ動作を表しています(動詞としては1880年代から;cross-counter(名詞)は1883年から)。また、1870年からは「異なる回路に属する二本の電線が偶然接触すること」を指すようになりました。